「ねえ、これやばくない?」
「また識先輩なのかな?」
「そうじゃない? だって、昨日も不良に絡まれてたって噂だよ」

次の日、学校に行くと廊下に人がたくさんいた。
みんな、なにかを見て話してるみたいだけど……。


「よ、きいっち」


薄暗い空気の中、海音くんの明るい声が聞こえる。


「あ……おはよう。海音くん、なにかをあったみたいんだけど、知ってる?」
「ん? いや、今来たばっかだけど……」


それから、少し背伸びするみたいにして、人がたくさんいるほうを見た海音くんは、


「あー……まただ」


苦い顔をしていた。


「ど、どうしたの?」
「いや、なんていうか……たぶん、すっげえヤバいことになるかも」
「ヤバいことって……」


一体この先になにがあるっていうの?
しかも、識くんの名前まであがってたってことは、関係があるの?


「海音、季衣ちゃん」


そこに宇宙くんも登校してくる。


「あ、あのね、宇宙くん……なんかあったみたいで」
「うん、知ってる。祈がもう動いてるから」
「祈くんが?」


そのとき、きゃーと声が聞こえた。


「ガラスに血がついてるよ!」


血って……。
一瞬、人だかりの隙間から、この先になにが起こっているのかが見えた。
廊下にはガラスの破片が落ちていて、窓もなくなっていた。
それから、血が見えて……。


「やっぱりこれ、識くんがやったんじゃない?」
「昨日、ケガしてたって聞いたよ」


これを……識くんが?
そんなはずない。だって、識くんが窓ガラスを割るわけ──