なんでだろう……なんでKis/metの人は、自分を守ることをしないんだろう。
誰かのために必死で、自分ばかり置いていって、傷ついて。
そんなの苦しいだけなのに。


「……識くんは、識くんだよ」


伝えたいことがたくさんあるのに、どう言葉にしていいかわからない。
だけど、伝わってほしい。


「わたしが知ってる識くんは、だれかのためにやさしく出来る人だし、だれかのために一緒に喜んでくれる人だよ」
「……季衣」
「もし自分を見つけたくて人を殴るなら、わたしが識くんを知っていくよ。識くんがどういう人なのか伝えていく。それで識くんが納得できる自分に出会えたら、こんな風に手を痛めなくて済むから」


傷だらけになった手をぎゅっと掴む。


「だからお願い。もうケンカはやめよう?」
これ以上、識くんが傷ついてほしくない。
そのとき、つーっと、識くんの頬に涙が一筋流れていく。


「……はは、さすがにグサッときた」


笑って、でも泣いていて、よくわからないって識くんが言って。
それでもいいんだよってわたしも泣きながら笑った。
いつの間にか空は晴れていて、きれいな虹が見えていた。