祈くんと過ごした翌日。
最後は識くんと一緒に過ごすことになっていたんだけど。


「おかしいな……このまま学校に来ないのかな?」


6限目が終わった今、教室に識くんはいない。
識くんには転校初日から追いかけまわされていたから、今日こそまずいかもって思ってたのに。
朝から識くんは学校に来ていなくて、ついに授業も全部終わってしまった。
このまま帰っていいのかな……?
でも、今日は識くんと過ごすって約束はしてたし。


「ねえ、校門に血があったんだって!」


しばらく席に座っていたら、廊下から女の子たちの声が聞こえてきた。
血って……?


「しかも近くで他校の不良が暴れてるとかで」
「うそ……怖くない?」
「駅前も警察着てるみたいだし、向こうは通らないほうがいいかも」


ひそひそと、でもばっちりと聞こえてくる内容。
駅前って……帰り道に近い。
わたしも近くは通らないようにして帰ろう。
それから30分経っても識くんは学校に来なくて、仕方なく帰ろうとした。
中庭を通って、それから校門近くを歩いていたとき。
グラウンド近くに生えている木からなにかが見えた。


「なんだろう……? 黒っぽいのと……赤っぽい……」


近付いてみて、それから見えていたのが赤い手だったことにおどろいた。


「えっ!? ま、まままって、識くん!?」


そこには、ぐったりと木にもたれかかっていた識くんがいた。
顔には血がところどころついていて、手にも制服にも、同じものがたくさんついていた。
目を閉じてるから、はたから見たら……


「や、やだ……どうしよう……死んでないよね?」


怖くなりながらも、識くんのことが心配で、急いでハンカチを探す。


「どこかケガしてたら手当を……ううん、それより救急車? ちがう、先生に──」
「へーき」


オロオロしていたら、目を閉じている識くんが苦しそうに口を開いた。
それからゆっくりと瞼が開いて、きれいな瞳と目が合う。


「やっぱり季衣か……」


笑ってくれようとしてるのに、すごく痛々しそう。


「だ、だいじょうぶ……? どこか痛いところは」
「ない。つーかどこもケガしてねーから」
「でも、いっぱい血が……」
「あー……あいつらのって……つってもわかんねーよな。ま、返り血だから」
「か、返り血!?」


これ全部が!?
だけど、識くんがケガしてないならよかった。
力が抜けたみたいにその場に座る。


「どうした、季衣」