「でも、それは祈くんの夢じゃない、よね……?」
「そうですね、でも無駄なんです。自分がなりたいものにはなれない運命ですから」
そんなの悲しい。悲し過ぎる。
「……勉強してたのは、祈くんにとってお父さんのため?」
「どうでしょうか。無意味なことではないですから、身に着けておいて損はないでしょう」
「でも」


だけど、その続きは出てこなかった。
祈くんの顔がとても切なそうに笑ってたから。
まるで、全部諦めたみたいな顔で。
そんなのいいはずなんてないのに。
そうわかってても、わたしにできることなんてなにもなくて。
もどかしい。そんなことを思っていたら、また電車が通っていく。


「本当は電車通学に憧れていたんですよ。ですが、僕は電車に乗ることを禁じられています」
「電車に乗ることを?」
「ええ、危険が多いとのことです。笑ってしまいますね、車よりはまだ事故は少ないように思うのですが」


そういえば、祈くんが前に、学園の中で駅を作ろうと計画していたことがあるって聞いた。


「……だから、駅を」
「そうですね、合法的に電車に乗れますから。さすがに家から学園までに線路を作ることはできませんでしたが」


逆にできてたらすごいけど……!
でも、できなかったんだ。
祈くんは、電車が好きなのに、その電車にも乗れないなんて。


「……祈くんが一番好きな電車ってある?」