そんなに忙しいのか……それともわたしと顔を合わせたくないのか。


「ご、ごめんね、一つ聞いてもいい?」
「どうぞ」
「これ、わざと日付順じゃないようにバラバラにした……?」


それまでずっと響いていたキーボードの音が、ピタッと止まった。


「……なぜそう思うんですか?」
「気のせいかもしれないけど……たとえば1日2日のあとに5日ってなってたりして、なんていうか、1枚2枚調整するだけで、またほとんど日付順に戻ったりするから」


だから、元々は日付順だったものを、”わたしの仕事”にするために、わざとバラバラなところを作ったんじゃないかって。


「……なにも考えていない能無しではないんですね」
「の、能無し……」
「少しあなたを試してみたかったんです。自分に任された仕事についてどう思うのか」
「……ええと?」
「まあ、Kis/metに入る素質としては変わらずあると認めてもいいようですが」


スッと、メガネを上にあげて祈くんは、


「ただ、僕としては反対です」
「え?」
「理事長の指示もありましたから、あなたを受け入れる方向で話は進めていましたが、正直、あなたが拒むのなら無理強いはしないつもりです。この組織にいる人間のことをよくも知らない人に、新しく入っていただくにはリスクと時間もかかりますからね」