「はあ~びっくりしたな」
いつもの笑顔に戻ってた。
それがすごく一瞬で、見間違いだったんじゃないかって思うけど。
「むり、してない?」
このままにしてちゃダメだって、なぜか思った。
「……え、なんだよ、きいっち。あ、もしかして雷怖いのか~?」
「うん、怖い。海音くんは?」
茶化すみたいな話し方だったけど、わたしが答えたら、海音くんの顔から笑顔が消えた。
もう一度、窓の外を見た海音くんは静かに言った。
「……母さんが死んだ日も、こんな天気だったんだ」
「え……」
さっきまで、全然大丈夫なんて言ってたのに。
お母さんとの約束を笑って話してくれてたのに。
今の海音くんは別人みたいに暗くて、悲しい。
「こういう天気になると、まただれかがいなくなるんじゃねーかって思う。そんなわけねーのに、なんか気分がさ、すっげえ落ちるんだよな」
もしかしたら、こういう気持ちを隠すために、いつも笑顔だったのかな。
お母さんとの約束を守るために。
「雷が怖いとかダセーよな。きいっち、だれにも言うなよ~?」
「言わないよ」
また無理して海音くんが笑おうとするから、わたしは笑っちゃダメだと思った。
「絶対、だれにも言わない。だって、それは海音くんが戦ってる証拠だから」
わたしも昔、雷が怖かった。
手が震えて動けなくなって。