なんだろう、海音くんの笑顔ってすごく特別なパワーがあるみたい。
でも、もしわたしが海音くんだったら、やりたいことあっても思いきってやれなかったかもしれない。
周りのことを考えたり、お母さんのこととかを思い出したら、結局じっとしてたりして。
わたしには真似できないけど、でもステキだなって思う。
それに、海音くんが「バカらしい」って言ったのは意外だった。
そういうこともちゃんとわかってて、それでもやりたいって思うんだ。


「あ、でもこの特大のパンケーキは母さんのためじゃねーぞ。きいっちのため」
「わたしの?」
「きいっちに笑ってほしかったからさ。オレだけに見せる笑顔が見てみたかったんだよ」


そんなこと言われたの初めてだ。
わたしの笑顔が見たいなんて……あ、でもママも一緒だ。
わたしによろこんでほしいって、いつも服やアクセサリーを作ってくれる。
それを恥ずかしいって思うようになっちゃって、全然着なくなって。
そのとき、ピカッと強烈な光が飛び込んできた。すぐにゴロゴロと雷の音が鳴る。


「うわっ、近くかな……傘って……」


ふと、窓の外を見ていた海音くんの顔が窓ガラスに映って見えた。
その顔はとても不安そうで、怯えたみたいな顔で、はっとする。
笑顔じゃない海音くんを見るのは初めてだった。


「か、かいんくん?」


呼んだら、びくっと肩が震えた。それから振り返ったときには、