次の日からは海音くんだった。


「きいっち~! おはよう~!」


宇宙くんのように迎えに来られてしまうと、ママに見つかったとき大変だから遠慮してもらった。
学校に着くと、後ろからどさっと抱きしめられる。


「か、かいんくん!?」
「はあ~腹減った~~~なんか食いに行こうぜ」
「えっ、朝ごはん食べてないの?」
「食ったよ! でもパンって食った気しねーんだよな。クロワッサン10個食ったけどまだ足りねーもん」


お、男の子ってすごいなあ……いや、海音くんだからすごいのかな?
わたしだったら1つか2つでもうお腹いっぱいになっちゃうけど。
そもそも、どうしてそんなにたくさん食べてるのに太らないんだろう!


「ってことで、こっちこっち」


そう言われて連れてこられたのは調理実習室だった。


「よし! じゃあ今からとびっきりのホットケーキを作りまーす」

もうすぐ授業が始まるのに、海音くんは時間なんて気にしてないみたい。
勝手にボールとかザルなんかを出して、ふふふ~んって鼻歌まで歌い出して。


「海音くん、いいのかな……ここ、勝手に使ったりして……」
「あ、きいっちの1限目は遅れるって担任に言ってあるから気にすんな!」
「いつの間に!? いや、そもそも器具とか材料とかバレたら怒られるよ……」
「へーき。ここにあるの、ぜーんぶオレのだから」
「……へ?」


ここにあるのって、もしかして今出してきたもの全部!?
たしかに、よく見たら大きな冷蔵庫の隣に小さな冷蔵庫がある。
そこには【☆海音☆】とラベルシールが貼られていた。


「だからきいっちは気にしなくていいぜ。よし、じゃあまずはこれ混ぜてくれ」


もうどこからツッコんだらいいかわからないけど、ここはわたしが知ってる中学校じゃないのかも。
お金持ちが通う場所だし、学校に自分専用の冷蔵庫があるのも当たり前なのかも……。
わたしが粉を混ぜてるとき、海音くんは「よいしょ」と大きな鉄板を持ってきた。


「これなら、すっげえでかいやつ作れるぜ!」
「た、たしかに……!」


でもどれだけ大きいものを作るんだろう。
ホットケーキって途中でひっくり返さないといけないよね?
大きすぎるとひっくり返せなかったりしそうだけど……。


「あ、きいっち~卵入れてくれ」
「う、うん! わかった!」


海音くんに言われた通り手伝っている途中、あることに気付いた。


「……海音くん、料理得意なんだね」