「頭を忙しくさせてたほうが楽なんだ」


それってすごく、すごく、すごく悲しい。
宇宙くんが眠たそうにしている理由がわかった。
きっと、人よりも忙しいし、人よりも頭を使っちゃうからなんだ。


「ねえ宇宙くん、体育館行こう!」




昼休みだからか、人は誰もいなかった。


「季衣ちゃん、どうしたの?」
「ええと、体育倉庫ってどこかな?」
「それなら向こうだけど……でも、そこには」


宇宙くんが指差した場所に向かって、そこの扉を思いっきり開ける。
すると中からどさどさと大量の枕が流れてくるように出てきた。


「本当にあった!」
「ダメだよ季衣ちゃん……また祈に怒られるし……」
「そうかもしれないけど、でも今は宇宙くんの気持ちが大事だと思うから」
「ボクの気持ち?」
「嫌なことを、お仕事とかで忘れようとするよりも、楽しいことで忘れちゃったほうがいいよ。だからほら、いーっぱい並べようよ!」


宇宙くんが最初に計画していたこと。
それは体育館を枕だらけにして、嫌なことをできるだけ忘れること。
そうしたら、少しでも宇宙くんがうなされずに済むはず。
どんどん並べていたら、いつの間にか宇宙くんも一生懸命手伝ってくれていた。


「このまま全部──って、うわ!」


並べていた枕に気を取られて転びそうになったけど、


「だいじょうぶ?」