「ほら、悪い夢って人に話したほうがいいって聞いたことあるから。あ、でも宇宙くんが話したくなかったら話さなくていいよ」


そう言ったら、宇宙くんは、ふふっと笑った。


「ありがとう、季衣ちゃん。説明するのはむずかしいんだ。今まであったことが、ぜんぶ出てくるって感じで……」
「夢じゃなくて、前にあったことを思い出しちゃうってこと?」
「そういうこと。ぼく、一度見たものは絶対に忘れることができないんだ」
「え……」


少しだけ寂しそうにする宇宙くん。


「記憶されて、ずっと頭にのこるから。だから、昔あったこととかも、ハッキリ思い出して夢に出てくるんだ」


すごく簡単に、なるべく空気が重くならないように宇宙くんは話してくれるから、それってとても辛いことだ。


「みんなには”うらやましい”って言われる。テストとか楽勝だって。それはそうなんだろうし、実際、テストは100点以外取ったことないから」


すごいでしょって、宇宙くん笑う。
でも笑っちゃいけない気がした。
だって、悪夢を見ていた宇宙くんの苦しそうな顔を思い出したら、それって”うらやましい”ことじゃない。


「だから、できるだけたくさんのことを覚えるようにしてる。そしたら悪いものを思い出す暇もなくなるって思ってたんだけど」
「だから新聞もたくさん読んで、お父さんのお仕事も手伝ってるの……?」