だから、私も小さいときから女の子らしいものばかり着せてもらった。
それこそ、フリルのドレスみたいなお洋服ばかり。
ズボンなんて履いたら怒られちゃって、毎日スカート。
家の中ではそれでよかった。
でも、外に出ると、私がかわいいお洋服ばかり着るから「お姫さまだって勘違いしてる」なんて言われちゃって、いじめられるようにもなったんだ。
ママのことは好きだし、かわいいものがきらいになったわけじゃないけど、男の子の格好をしてたほうが楽。
この学園は、性別関係なくスラックスとスカートが用意されていて、着たいほうを着てもいいことになってるの。
朝も、ママの前ではスカートにして、家を出てからはスラックスに着替えたんだ。


「ってもうこんな時間!早く行かないと!」




急いで走ったのはいいけど、門から校舎までどれだけあるのー!?
走っても走っても着かない気がする。それに、高そうな車が、びゅんびゅん走っていく。
歩いて通ってるのって私ぐらいなのかな。


「とにかく今は職員室に行かないといけないんだけど……」
「もしかしてお前が迷子にやってるやつ?」
「えっ?」


いきなり声をかけられてびっくりした。
振り返ったら真っ赤な髪の男の子が立っている。誰だろう、すごい顔がかっこいい人だ。
それに、この声、どこかで聞いたことがあるような……?
あ、さっきの広告で聞いた声なんだ。


「こんなところでキョロキョロしてるってことは絶対そうだろ」


うそ、わたしってばそんなに不審者みたいだったんだ!