「うぇ!? もう読み終わったの?」
「季衣ちゃんはまだだった? あと5分ぐらいかかりそう?」


5分どころか今日中に全部読める自信がないのに……!


「宇宙くん、本当に全部読んだんだよね?」
「そうだよ」
「これを毎日?」
「うん、仕事で大事なことだから」
「仕事って……」


宇宙くんの頭がうつらうつらと動く。


「眠たくなってきた……季衣ちゃん……あとで起こして」
「え、あ、うん」


わたしが返事する前にはもうスースーと寝息が聞こえていた。
ものすごい集中力だったんだろうな。
だってこの量をあの一瞬で読めるはずがない。


「宇宙さまは、お父様の会社をすでに手伝われているのです」


運転する執事さんがやさしく教えてくれた。


「本当ならば、学校に行く時間もないほどお忙しいのですが、どうしてもその時間は欠かせないと、毎日、夜遅くまでお仕事をされています」
「……そうだったんですか」


だから昼は眠くなっちゃうし、寝てることも多かったんだ。
そんなこととは知らないで、宇宙くんと一緒にいるのは楽そうなんて思ったのは失礼だったな。


そのあと、宇宙くんとクラスがバラバラだから昼休みは図書館で集合しようって話になった。
お昼ご飯を済ませて向かうと、そこには本を広げて床に座って眠っている宇宙くんだけがいた。