凛とした声が中庭にひびいて、みんなの視線が校舎に集中した。
2階にある生徒会議室と書かれたプレートの教室には、祈くんが眉をひそめてわたしたちを見下ろしている。


「涼風季衣を取り合っているのですか」
「と、取り合われているのかは……」


祈くんはメガネをくいっとあげると、ものすごく大きなため息をついた。


「とりあえず涼風季衣を生徒会室に連行するように──上からの命令です」


その言葉を聞いた瞬間、識くんたちの動きがパタリと止まった。


「おい……上からってまさか」


海音くんが顔を青ざめている。宇宙くんだって「さいあくだ……」とブルブルしている。
上からってことは、ものすごく偉い人の命令なのかな。
だとしたら、どうしてみんなはこんなにも怖がっているんだろう?


「……季衣」


識くんがわたしを呼んだ。その顔はほかの二人よりも冷静だったけど、


「ここで反論したら、明日から生きていけないと思え」


とんでもない角度から脅されている!?
生きていけないってよっぽどのことじゃない?


「一体、なにが──」


次の瞬間、ふわりと身体が浮かんだ。
周りにいた女の子たちが「きゃあああ!」と、ものすごい歓声をあげている。


「このまま連れてく」


なんと、識くんにお姫様抱っこ──じゃなくて、担がれてる!


「お、重くないの!?」