わたしの家はものすごく裕福ってわけじゃない。
でも、ここに通う人はお金持ちが多いイメージだから、そこに釣られる海音くんは、もしかしてわたしと一緒で普通の家……


「オレ、学食って食っちゃいけねーことになっててさ。毎日シェフのコースとか飽きるじゃん?」


普通の家のわけなかったー!
むしろ毎日シェフのごはん食べてるんですか!?


「この学園は学食もうまいって聞くから食べてみたいんだよ! きいっちだってそうだろ?」
「わたしは昨日食べたんですけど……」


ママが「今まではお弁当だったから、たまには学食とかで楽しんでおいで」と言ってたから、この学園では学食が当たり前だと思ってたんだけどな。


「うわー! うらやましい……じゃあ俺のためにもきいっち、仲間になってくれよ」


切実そうな目……!
そんなに見つめられたら、なんだかこっちが悪いことしている気分になる。


「わたしは──」
「口説くのは俺の役目」


ぐいっと後ろからだれかに抱きしめられる。
びっくりしていると、左肩にこてんときれいな顔の……織くんがいた。


「なんだよ織! 協力プレーだろ?」
「季衣を誘っていいのは俺だけ」


そんなルールなんてあったの!?
いや、どう考えても織くんが勝手に決めたことだ。
だって、海音くんの頭の上にたくさん???が浮かんでる。