「新しい学校はどうだった?」


やっぱり聞かれた……。
家に帰って、いつもの格好に着替えたらママがちょうど帰ってきた。
ママはわたしが男の子みたいな格好をして学校に行ったなんて夢にも思ってないみたい。
それもそうだ。
今のわたしは、ママの理想だもん。


「季衣がかわいくて、みーんなびっくりしてたんじゃない? 天使がきたーって」
「あはは……それはないかな」


ママにとって、わたしは可愛い女の子でいてもらいたんだ。
だから、可愛い髪型にして、お洋服だってフリフリのドレスみたいな格好をしないといけない。
そのせいでいじめられたこともあったけど、ママは知らない。
ただ、わたしがクラスに馴染めなかったって思ってるみたいだった。
学校に通えなくなったときも、


『大丈夫!学校なんていくらでもあるんだから、季衣が通える学校を探そう!』


そういって、イヤな顔なんてひとつも見せないで味方になってくれた。
それはすっごく心強かったけど、いじめられてた理由を知ったら、きっとママは傷つくはず。
だから言えなかった。


「ねえ、制服のスカートにもフリルをつけたほうが、かわいいと思うの。先生にも確認したんだけど、制服のアレンジは問題ないんだって」
「……へ、へえ……そうなんだ」


笑顔が引きつってしまう。
そんなことしたら、絶対二度とスカートなんて履けなくなる。