男の子たちが私を見て首をかしげている。


「涼風、季衣です……」


女です、って言おうとしたら、教室の後ろの扉がガラガラと開いた。


「あ、織くんだ!」


女の子たちがうれしそうに話している。
さっきの真っ赤な髪の男の子だ。
まさか同じクラスの人だったなんて……。
織くんと目が合うと、「は?」と声が聞こえてきそうな顔をした。


「なんでここにいるんだよ」
「えっ、あ……ええと」


転入してきたからでして、と言うよりも先に「織くんの知り合い!?」と声が聞こえてくる。


「織くんって涼風くんと友達なの?」


……ん? 涼風くん?


「友達つーか、オーディションで会った」


面倒くさそうにそう返して、廊下側の一番後ろの席にどすっと座った。
そもそもオーディションに参加したつもりではなかったけど、今さらわたしが説明できる隙がない。


「ってことは、もしかしてKis/metのオーディションって涼風くんが合格したんじゃない!?」
「ご、合格……?」
「あのメンバー以来、初めての合格者だよね!」
「いいなあ、Kis/metはほんとうに素敵じゃない? 名前も、運命って意味があるみたいだし」
「それ知ってる! しかも、kisがキスで、metが会うを掛け合わせてるって聞いたよ~」


そっか……そういう意味があったんだ。
でもわたし、合格したわけでは──


「そうだよ」


わたしの心の声とは反対に、識くんが当たり前のようにうなずく。


「唯一の合格者。なのに逃げやがって」
「ご、ごごごめんなさい……」


思いっきり怖い顔で見られてる……!