早く説明しないとって思ってたら、ガタガタと椅子を引く音が聞こえた。


「合格者の顔をしっかりと見ておかないと。これからのブランディングのヒントも欲しいですし」


祈くんも識くんに負けじと、わたしに近付いて至近距離で見つめられる。


「ああ、失礼。ボクは西條 祈(さいじょう いのり)です」
「ハイハイ! オレは御子柴 海音(みこしば かいん)!」
「ボクは……三波 宇宙(みなみ そら)


すごい……全員、性格がバラバラ。


「よし、オレも顔近づけようっと」


祈くんに続くように、海音くんまで加わって、


「たのしそう……ボクも、この子抱き枕にしていい?」


宇宙くんまで!?
もみくちゃにされそうになりながら、なんとか「あの!」というけれど全然話を聞いてもらえない!
このままじゃダメだ!
とりあえずここは……!


「ご、ごめんなさい……!」


その場から逃げるように、勢いよく走り出した。


「あ! 季衣! どこに行くんだよ!」


識くんがわたしを呼ぶ声が聞こえるけど、それどころじゃない!
あんなにもかっこいい人たちに囲まれたら、頭がおかしくなる。
そうじゃなくても、まだ過去のトラウマもあって、まともにいられないっていうのに……。
どこかも分からない場所をぐるぐる走り回っていたら、


「やだ、こんなところにいたのね」


廊下の奥から歩いてきたのは、とっても美人。


「なかなか来ないから、どこかで迷子になってるんじゃないかと思って探しに来たの。大丈夫?」
「あ……すみません! 職員室を探していたんですが……」