「その若さで副社長、本当にしっかりしている。ところで……そちらの可愛いらしいお嬢さんは?きみの部下かな?」

「はい。僕の補佐です」

「初めまして、田中彼方と申します。本日はお招きありがとうございます」

「ーーへぇ、本当に可愛い子じゃないか。ほら、おいで」

 会長は彼方の手を引くと自分の隣に立たせる。そしてそのまま彼女の手を撫でたり揉んだりと好き勝手にいじくりまわす。
 
「やはり、若い子の肌は素晴らしいね」

「ありがとうございます。でも会長の手もスベスベですよ?」

「おや、嬉しいことを言ってくれるね。これは今夜は君のために取っておこうかな」

 彼方は任されたのだからと、嫌な顔一つせず対応する。それに気を良くした会長。ニヤニヤと笑い彼方の腰を抱いてさらにセクハラ紛いのことをする。
 伏見はえげつないなぁと思いつつも助けはしない。彼方を連れてきた目的はこの為であり、このまま会長に気に入られればスムーズに事が進む。

「うん、この肉つきもたまらないねぇ」

「ひゃ、あ……っ!くすぐったいです!」

 いや、それアウトやんと伏見もさすがにと思った。しかし、それでも彼方はボロを出さない。こんな自分に居場所を与えてくれた伏見のために必死で笑顔で耐える。

 ひたすらに従順。言いつけを守る、犬のよう。

 そんな彼方を見て、伏見はーー。




「そういえば、会長。先日お話しとった店、会長好みのええ子いましたよ」

「本当かい?じゃあ、後でーー」

 会長の言葉を遮り伏見は彼方を自分の方に引き寄せ耳打ちする。

「ーータクシー呼んどるさかい、今日はお開きや。行き」

「え?」

「はよ、行かなあかんのちゃうん?それとも……まだ僕に仕事させたいんか?」