翌日から伏見の行動は大胆になり、彼方は動揺する。

「なぁ、彼方。これ終わったら一緒にランチ行かへん?」

「この後は訪問先の方と打ち合わせがありますので」

「はぁ?なんでそんな仕事いれたん?しゃーなしな、ほんなら今夜は?空いとる?」

「えっ、今夜ですか?そうですね……定時に上がれれば大丈夫ですけど……」

「じゃあ決まりやな。ほんなら迎えに行くわ」

「あ、あのっ……!」

 強引に約束を取り付ける伏見は彼方が拒めないのを良いことに、何度も彼方を誘う。最初は戸惑っていた彼方も次第に慣れたのか嬉しそうにするようになっていた。
 伏見が自分を必要としてくれている。その事実が単純に嬉しくて、彼方自身が伏見を好きかどうかはそこには関係なかった。



 伏見は仕事中も常に彼方を連れ歩いていた。自分と同じように彼方の魅力に気づき、彼方を狙う輩が多いのではと思い牽制する意味も込めての行動だったが、その効果は絶大だった。

「あー……伏見さんまた彼方ちゃんにくっついてる」

「ほんと仲良いよね〜」

「羨ましい……!」

 そんな女子社員の嫉妬混じりの声に伏見は計算通りと得意気だった。側から見ても彼方と何かしらの関係があると思わせられた。このまま行けばいずれ彼方は自分のものになる。そんな予感がして、伏見はさらに行動に拍車をかけることにした。


 そんな伏見に彼方は困惑するばかり。何かとかまわれ、そばにおかれる日々が続く。しかし、伏見が彼方に好意を寄せているなど微塵も思っていない彼方はただただ戸惑うばかりであった。

「あの……伏見さん」

「なんや?なんかあったんか?」

「いえ……そういうわけではないんですが……」

 歯切れの悪い言い方をする彼方に伏見は首を傾げる。すると、彼方は少し照れながら告げた。

「その、最近よく一緒にいますけど……私で良いんですか?」

「……は?」