エンが声の主を探し視線を彷徨わせると、そこには金を混ぜたオレンジ色の(たてがみ)に、空色の瞳の大きなライオンがいた。雄々しいライオンは太陽の光を浴び、まるで太陽神の化身のような神々しい姿。以前イーニアス殿下の金獅子の姿を見たときも、美しいと思ったが、それ以上の美しさ。こんなに美しい生き物は見たことが無い。堂々と空を仰ぐ大きな獅子が、もう一度咆哮を上げると、その声に再び空気がビリビリと震えた。

 あれは……?

 金を混ぜたオレンジと空色……それはあの人の色。

 空に向かって咆哮を終えたライオンがこちらを見た。

 いつもとは違う姿ではあるが、あのライオンはレオだ。

 あの瞳はレオのもの……私には分かる。

 レオが来てくれた。

 じんわりと瞳の奥が熱くなり、鼻の奥がツンと痛くなる。涙が出そうだ。

「レオ!!」

 思わず大きな声が出た。

 会いたかった人、振れたい人、愛しい人。

 レオが地面をグッと踏み込んだのが分かり、私も同時に地面を蹴り駆け寄った。

「レオ、会いたかった」

 エンはレオの首に腕を回し、鬣に顔を埋めた。すると優しい太陽の匂いがした。

 レオの匂いだ。

「レオ来てくれてありがとう。大好き」

 自然と言葉が溢れ、こぼれ落ちた。

 レオが獣の姿から獣人の姿へと変化し、私の体を包み込んだ。

「エン大丈夫か?何もされていないか?怪我は?」

「ふふふっ……大丈夫です。どこも怪我などしていません。この人達と話をしていただけです」

「話を?誘拐だろう?」

「いいえ、違います。誘拐なんてされていませんよ。道に迷ってしまった所を保護して頂いただけです。お礼こそしても、罰など与えないで下さい」