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 私が今いる場所は隠れ家のような場所だった。

 薄暗い森の中にひっそりと立てられたこの場所は、施設のある森の奥の屋敷に似ていた。

 ああ……早く帰りたい。

 空は曇天、私の心を映すかのように濃い雲が広がっている。

 私はここら出ることが出来るのだろうか?

 日本で生活していた頃に見たドラマで、子供を誘拐した犯人に対して必死に交渉をする交渉人のまねをして見たが、今のところ上手くいっている。

 今私が考えている案はこうだ。

 遅かれ早かれここは騎士団によって見つかるだろう。その時どうするかだ。ここにいる皆を守るために、私が外に出て騎士団と交渉する。そこで私の安全を保障した上で、この屋敷の(かしら)にお金を渡す。

 これがベストだと思う。

 だってね、ここにいる人達は見てくれはあれだが、実は良い人達だったの。

 話しているうちに分かったことなのだが、ここの頭はノクスさんという名前で、悪人面だが気の良いおじさんだった。王都からかなり離れた辺境の村から出稼ぎにやって来たそうだ。一ヶ月前に村が魔獣に襲われ、壊滅状態らしい。重傷を負った村人も大勢いて、薬や食べ物代を稼ぐために王都にやって来たらしい。しかし良い職に就く事も出来ず、日雇いの仕事をこなし村に送金をしているが、それは微々たるもの……どうしたものかと考えていたところに、私を見つけたというわけだ。

 状況は分かるが、誘拐はダメでしょう。

 犯罪だよ。