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 エンは暗い部屋の一室で目を覚ました。

 ここは?

 あの時、薬を嗅がされて意識を失って……。

 はっ……ティエナは?

 顔を左右に動かすと、ティエナがすぐ近くで横になっていることが分かった。胸が前後に動いている事から、眠っているだけなのだろう。良かったとひとまず胸を撫で下ろすが、これから起こりえる事を想像して体が震えた。

 私はどうなってしまうのだろうか?

 殺されることは無いだろうが、無理矢理にあんなことや、そんな事をされるかもしれない……。

 ダメダメ、悪いことばかり想像してばかりではなく、一発逆転を狙わなくちゃ。

 大丈夫、なんとかなる……いや、なんとかしてみせる。

 私はゆっくりと立ち上がろうとして、手足が縛られていることに気づく。

 ああ……手足が縛られていて、上手く動かせない。

 モゾモゾと体を動かし、腹筋を使って起き上がった。何とか座ることが出来たが、ここからどうすれば良いだろう。そんな事を考えていると、部屋に誰かが入って来た。

「おう、ようやく起きたみたいだな。人間」

 そう声を掛けてきたのは、悪党面の無骨でがさつそうな男だった。ザッ悪党と言った感じの男の姿に少しだけホッとした。何故なら、こういった男なら、きっと目的はお金だと思ったからだ。交渉の余地はある。

 ただのお金目的であってほしい。

 私はそう願いを込めつつ、相手を威嚇するように睨みつけた。

「あなたの目的は何ですか?」

「そりゃ、金だな。人間なんて珍しい動物、売り飛ばせば一攫千金だぜ」

 嬉しそうに笑う男。

 やはりお金が目的か。