「殿下、イーニアス殿下に頂いた物を、勝手に捨てても大丈夫ですか?」

「問題ない。何か言われたら、俺の名前を出せ」

 それって、本当に大丈夫なんだろうか?

 不敬とか言われて、何かされたりしないかな?

 う゛ーん。と、あれこれ考えていると、殿下が真剣な顔を向けてきた。

「ところでエン。気になることがあるのだが……」

「気になることですか?」

「ああ、エンはイーニアスのことは名前で呼ぶのに、俺のことは殿下と呼ぶんだな」

「そう言えば……」

「何故だ?」

 何故だと言われても、始めて出会った時からそう呼んでいたしな……。今更そんな事言われても、分からない。強いて言うなら……。

「皆が『殿下』と呼んでいましたから……そう呼ばないといけないものだと思っていました」

「俺を殿下と呼ぶのは、それだけの理由か?」

「ええ……まあ……そうですけど?」

「それだけの理由なら、俺のことも名前で呼んで欲しい」

 殿下の透き通るような空色の瞳が、強く切望してくる。

 ああ、そんな瞳で見ないで欲しい。