王城で過ごすこと3日。

 殿下は時間を見てけは私の元にやって来て、すり寄ってくる。

「殿下?城に戻ったら、忙しくなるって言ってませんでしたか?」

「ああ、忙しいぞ」

「……忙しそうには見えないのですが?」

 私に抱きつき、ゴロゴロと喉を鳴らす殿下の頭を撫でながら、思っていることを伝えた。しかし殿下はそんな事どうでも良い、と言った様子で長い尻尾を振っている。ゆらゆらと嬉しそうに揺れる尻尾。その尻尾が突然動きを止めた。

 あれ?

 どうしたんだろう?

 殿下の顔を覗き込むと、何故か眉間に皺を寄せていた。

「イーニアスの匂いがする」

「イーニアス殿下の?……あっ、そう言えば先ほどティエナがイーニアス殿下から預かったと、この袋を持ってきたんですけど……」

 殿下の前で、袋の中身を確認する。

「ん?何ですかねこれ?良い匂いがするけど……匂い袋?」

 それを見た殿下が、唸り声を上げた。

「あいつ……ふざけやがって!」

 グルル……と、牙を剥きながら、殿下が怒りを露わにした。

「殿下これは何なのですか?」

「これには、イーニアスの匂いが付いている」

「イーニアス殿下の匂い?ですか?」

「エンには分からないかもしれないが、これは所有権を主張する匂いだ。まるでエンは俺のモノだと言っているかのようだ」

「何ですかそれ!こっわ……」

 日本ならストーカーがやりそうなやつ。

 怖いよ……怖すぎる。

 固まる私をよそに、殿下はティエナを呼ぶと袋をすぐに捨てさせた。