縁は意を決っして森の中を歩いて行くが、生い茂った木や草以外見つけることは出来なかった。

 ああ……どうしたら……。

 地面に落ちている草や木の葉を集めて寝床を作ろうかと思ったが、こんな何が出るか分からない森の中で地面に寝るという選択肢は危険すぎる。

 とりあえず木に登ってみるか。

 縁は器用に手と足を使って木を登りを始めた。

 木登りは得意だ。

 幼少期は近所の子供達を引き連れて、野山を駆け回っていた。子供達のボス的存在だった自分は、今となっては黒歴史だが、あの頃小猿の様に山を駆け回っていて良かったとつくづく思った。泥だらけになって遊んでいたあの頃が懐かしい。

「はぁーー。お父さん、お母さん……今頃心配しているだろうな」

突然こんな所に来て壮大な迷子になり、家族と連絡も取れない。ポケットに入っていたスマホは当たり前だが圏外だった。

この年になって親を心配させて……親不孝だな。

「はぁーー」

 日が沈むにつれて気持ちも沈んでいく。

 このままではダメだ。

 縁は気合いを入れる為、両手で頬を叩いた。パチンと肌を打つ乾いた音が響き、気合いを入れ直した縁は顔を上げた。木の上で思いにふけっている間に、空はオレンジから夜の色に染め上げていた。煌めく星々が顔を出し始め、それを美しいと思うぐらいにはまだ平静でいられている。

 ここには明かりが無い。