*
私と殿下は鍛冶屋のガンスさんの店を出ると、王都の街の中を歩いていた。王都の街の中はとても賑わっていて、色々なお店が並んでいる。
うわーー。
沢山の獣人さんがいるな。
頭についた耳が気になり、テンションが上がってしまう。
「殿下、凄いです。とても賑わっていますね」
物珍しさからキョロキョロとしていると、フルーツを売る店主のおばさんに声をかけられた。
「ライオンのお嬢さん、これ味見していきな」
手渡されたのは、リンゴに似たフルーツだった。それを口に入れると、やはりリンゴのようなシャキシャキとした食感と甘味が口に広がった。
「んんーー!美味しい」
私が頬を押さえてそう言うと、殿下がいくつか手に取って買ってくれた。
「おや、優しい彼氏だね」
私は慌てて店主のおばさんの言葉を否定した。
「かっ……彼氏じゃないです!」
「おや、そうなのかい?とてもお似合いだと思ったんだけどね?」
それを聞いた殿下が、嬉しそうに他の果物も追加で購入し、店を後にした。
「毎度あり。ライオンのお嬢さん。またおいで」
「はい。ありがとうございます」
今、私の頭の上にはライオンの耳が付いたカチューシャを着けている。まるでアミューズメントパークで、いい年した大人が浮かれて着けているかのようで、初めは抵抗があった。しかし自分が人間だとバレるよりは良いと、この可愛らしいカチューシャを受け入れた。もしバレたら……以前殿下が言ったような、誘拐事件などの最悪な事態が起きるかもしれない。それだけは避けたい。