「おいおい。レオンポルドのそんな顔、なかなか拝めないぞ。よっぽどそこのお嬢ちゃんを大切にしてるんだな。おっ……待てお前……、この匂い……嬢ちゃん気づいてんのか?」

「うるさい。お前は黙っていろ」

「そんな事言ったって、独占欲丸出しだろうが!お前本当にレオンポルドか?別人だろう」

「黙れ!」

「はぁーー。嬢ちゃんが良いなら、俺は別に言うことはないがよ」

 二人の言っている意味が分からず、首を傾ける。

「殿下、どういうこと?」

「ああ、エンに俺の匂いを付けているんだ」

「殿下の匂いを?」

「そうすることで、他の男はそうそう近づけない。それでも近づこうとする奴は、よほどのバカか、よからぬ事を考えている輩だな」

 それって、動物が体をこすり付けて、匂いを付けるやつかな?

「えっと……マーキング?」

 私がボソリとそう言うと、二人がギョッとした顔でこちらを見た。

 あれ?変なことを言ったかな?

「エン、それを何処で聞いた?!」

「えっと、元の世界でも、動物がマーキングで好意のある人や物に、匂いを付けるというのはありましたよ」

「え……エンはそう言うことをされたことがあるのか?」

「はい。ありますよ。家でネコの黒助を飼っていましたから」

「それで……そいつはどんなことをするんだ?」

「黒助が体をすり寄せてくるんです」

「それから?」

「それだけですけど?」

「…………」

 急に黙ってしまった殿下の顔を覗き込む。