「エンどうした?」

「ああ……えっと……殿下はもっと年下だと思っていました」

「何だと?どうしてだ?」

「だって、獣化した姿がすっごく可愛いから」

「「…………」」

 二人の間に沈黙が流れる。その沈黙を破ったのは殿下だった。

「あれは、なぜかエンの前ではあの姿になってしまうんだ」

 まるで、いつもは違うと言いたげな態度に吹き出しそうになる。まあその辺はどうでも良い。

「はあ、そうですか」

 ああ、何だか今日はいろいろありすぎて疲れた。

「本当に分かったのか?エンはもう少し危機感を覚えることだ。本当に危険なんだからな」

「は……い……。誘拐されないように、気をつけます」

「そうだな。まあ誘拐されたとしても、俺が必ず助け出しにいく。俺はお前を手放す気は無いからな」

 そう言って殿下が私の腰に手を回して、引き寄せた。

 私の心臓は殿下の発言と、行動で大きく高鳴っていく。

 ドキドキと忙しなく動く心臓。

 ギラリと光る獣の目をした殿下の顔が近づいてくる。

「エンは……誰にも渡さない。俺のモノだ」

 名前を呼ばれた後、殿下が何かを言っていたが、自分の心臓の音が邪魔をして、聞き取ることが出来なかった。

「えっ……何ですか?」

「良い。今は黙って私の唇を受け入れろ」

 形の良い殿下の唇が押し当てられ、無理矢理に舌がねじ込められる。

 考えなければいけないことが、沢山あるのに、今は殿下の事で頭がいっぱいになってしまっていた。