「人間であるお前を良く思わない獣人など、いないと思うがな」

「えーーっ、人間って言ったって、私は本当に普通の人間なんですよ」

「お前はそう言うが、人間とは『この世界に奇跡をお越し、導く存在で、神の加護を得るもの』と昔から言い伝えられているのだがな」

「何ですかそれ!」

「子供でも知っている物語にもなっていて、人間は伝説の生き物とされている。そんなお前の存在が他国にでも知られてみろ。謁見させて欲しいと、世界中から使者や王族が押し寄せるだろうな。それぐらいならまだ良いが、良からぬ考えを持つ国の奴らが、エンを誘拐する可能性もある。誘拐された先で、無理矢理婚姻させられることだって、考えられるんだぞ」

「う……そ……でしょう……」

 人間とはこの世界では、かなりやっかいな位置づけにいることを、再確認して血の気が引いた。

「ウソでは無い。エンはもう少し自分の存在の尊さをわきまえた方が良い。危機感が足りなさすぎる」

「そんな事言われても……私は26年間、ずっと一般人で平民だったんですよ。急にそんな事言われても困ります」

「ん?エンは26歳だったのか?」

「ええ、そうですよ」

「そうか。それならエンは俺の一つ下だな」

「えっ!殿下って27歳なんですか?」

「そうだが?」

 殿下って年上だったの?