「エン、どうした?何かあったのか?」

 私の様子を心配した殿下が、顔を覗いてくる。近くに来た殿下から、お日様のような優しい匂いが……殿下が近くにいるだけで安心する。異性に対してそんな風に思う人は、日本にもいなかった。

 殿下は特別な人……そんな言葉が脳裏に浮かびそうになるが、それを首を振って必死にかき消す。

 何を考えているのよ。

 そんな私の内心に気づく様子も無く、殿下が私の肩に顎を乗せ、ゴロゴロと喉を鳴らした。こう言う所は、ライオンと言ってもネコ科なんだなと思う。そして最近はこんな風に甘えてくる殿下を、受け入れてしまっている自分がいた。

 このままではいけない気がするのよね。

「殿下、近いです。離れて下さい」

「なぜだ?」

「なぜって、殿下はこの国の第三王子様なんですよね?」

「そうだが?それがどうした?」

「それがどうしたって……。そんな人が、私なんかと仲良くしていたら、良く思わない人が沢山いますよ」

 私の言葉を聞き、殿下が大きく溜め息を付いた。