ここへ誰も来るはずがないのだ。だって、私がここにいることを知る人が誰もいない。親も友達も捜索隊も、どんなに頑張ったって私を見つけ出せない。ここは異世界なんだから!

 そう言えば、何故私がここが異世界だと断言しているかって?

 それは私の回りに生えている植物たちのせいだ。

 色取り取りの花や草は、何の変哲もない植物に見えるのだが、ここは異世界……ひときわ目を引く花は動いていた。風に揺れているのとは違い、自分の意思があるように茎をくねらせている。今まであまり見ないようにしていたが、意識してしまうと目がそれを追ってしまう。

 まるでこちらを誘うように、甘ったるい香りを放ちながらこちらを誘うように手招きする花々。

 それを凝視してしまい「ヒッ……」と、悲鳴に近い声を上げてしまう。

「怖すぎるわ!!」

 恐怖を吹き飛ばすように、右手を前に出しながら芸人バリの突っ込みを入れる。

「あぁーー。もう嫌だ……心が折れる」

 日も暮れかけ、気づけば空がオレンジ色に変わりだしていた。

 やばい……やばい、やばい、やばい、やばいよ。

 やばいやつだよ。

 とりあえず、体を休ませることの出来る場所を見つけないと。