そんなわけで始まったこの施設には現在、元国王様で先王のラファエロ・エンブリア様と、ウサギ獣人で元聖女様のレーニン・クレイア様、レッサーパンダ獣人さんで木になってしまうポノロ・クラウンさんの三人が入居している。そして今日、もう一人入居予定の利用者様がやって来ることになっている。

 それは何と、人魚族で元人魚姫のローラ・フレア様。

 ローラ様の到着を玄関で待っていると、仰々しい馬車がやって来た。馬車がエンの前で止まると、たっぷりの水が入った馬車が……これ、どうなっているの?何で水が外に出てこないのだろう?

 そんな馬車の中から、耳がギザギザでメイド服を着た女性が出てきた。

「ローラ様は歩く事が出来ないのですが……」

「承知しております。クーさん」

 クーさんこと、介護職員のクマ獣人クフテさんを呼ぶ。私はクフテさんの事を親しみを込めてクーさんと呼んでいる。クーさんは寡黙な獣人さんだが、とても気の利く働き者だった。クーさんは事前に用意していた、水の入った樽にローラ様を移し、風呂場へと向かった。水の入った風呂内にローラ様を移すと、ローラ様は安心したように息を吐いた。