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 今私の前には、認知症に対して理解を深めたスタッフ達が集まっていた。私はそのスタッフ達一人一人に視線をやってから、真っ直ぐに前を向く。

「皆さん本日より、この世界初の介護施設を開業します。私達の頑張り次第で、理不尽な扱いを受ける認知症の獣人さん達を一人でも助けたいと思っています。そして、認知症だからと処刑される獣人のいなくなる国にするために、私に力を貸して下さい。本日より、よろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げると、スタッフ全員が拍手をしてくれた。

 出だしは好調だ。

 ここからは一人一人自己紹介をして、親睦を深めていこう。

「では、この施設で一緒に働くスタッフとして皆さんの自己紹介をしましょう。まずは私から、私はエンです。この施設の責任者です。何かあったら、遠慮せず何でも言ってきて下さい。では次はティエナさん。お願いします」

「はい。わたくしは、山猫族のティエナです。エン様のメイド兼施設手伝い要員です。エン様に危害を与える者には容赦しません」

 無表情で言う、ティエナが怖い。

 一瞬右手に光るモノが見えたけれど、見間違いかしら?

 スタッフ達の方を見ると尻尾が膨らみ、ビリリと震えているように見える。ティエナがダメ押しとばかりに全員をー睨みすると、皆の尻尾が更にビンッと立ち上がった。

 これは相当怖がっているな。

「ティエナは無表情ですが、怖くないので大丈夫ですよ」

 一応フォローを入れておく。