悔しい気持ちでいると、ティエナが戻ってきた。

「エン様、こちらでよろしいでしょうか?」

「それで大丈夫よ」

 エンは水1リットルに対して、塩小さじ1より少なく、砂糖大さじ4ぐらいを大雑把に入れ、よくかき混ぜると塩と砂糖が溶けきるのを確認してコップに注いだ。これは即席のスポーツドリンクだ。本当は蜂蜜やレモンを入れた方が飲みやすいが今はそんな事を言っていられない。

「さあ、おじいちゃん飲んで」

 老人の口にコップを押し当て、スポドリもどきを無理矢理飲ませる。すると、こくんっと喉が鳴った。

「よかった。飲んでくれた。ゆっくりで良いから、もう少し飲んで下さい」

 コップを傾けると、ゆっくりと嚥下を繰り返し、飲用するおじいちゃん。その様子を見て、エンはホッと安堵の溜め息を付いた。気づけば、老人はコップ一杯のスポドリを飲み終えていた。思ったより元気そうだが、目を開けたり、話そうとする様子が無い。もしかして、目と耳に障害がある?

 でも……こちらの言っていることは聞こえている気がするんだけどな?

 だってさっきから耳がピコピコと動いているんだもの。

 んんーー?

 どういうこと?

「おじいちゃん、もう少し飲んでくれますか?」

 老人に声をかけると、コクリと頷いてくれた。

 やはり聞こえているようだ。

 良かった。