「二日間ずっと、あそこにいるわけでは無いわよね?」

「……あそこにいましたよ」


「「…………」」


 私とティエナは沈黙した。

 それから一呼吸置いて、絶叫する。

「ウソでしょう!!」

 私は急いでおじいちゃんの所まで行き声をかけるが、ピクリともせずに目を瞑っている。

「まさか……まさか……ウソでしょう」

 そっとおじいちゃんの手を取り、手首に触れ、脈を確認すると、微弱ながら脈が触れる。大丈夫、生きている。それでも危ない状態だろう。

「ティエナ、すぐに水と砂糖と塩を用意して!ピッチャーのような物があったら、それもお願い」

「水に砂糖に塩、それにピッチャーですね」

 無表情で復唱したティエナが、走り出したのを見送り、エンは老人の状態を確認していく。体は火照った様子は無く、呼吸も荒くないから熱中症では無さそうね。でも、皮膚に張りは無く、唇がかさついている。脱水症状を起こしているのは明らかだ。すぐに点滴をしてあげたいけれど、そんな物はこの世界には無い。何度も話しかけるが、老人は声を発してくれない。

 ああ、どうしてもっと早く気づいて上げられなかったのだろう。

 騎士さんのご家族だと思い込んで、放置したのは私の責任だ。