「分かってはいたが、ほとんどの貴族が悪魔付き……認知症の症状の現れた獣人を殺せと言っている」

「そんな……何故そこまで?」

「認知症の発狂する姿は確かに鬼気迫る物がある。あれを見てしまえば、悪魔付きと貴族達が騒ぐのは頷けるのだがな。その認知症の一人が先王だからだと言うこともある」

「先王様が認知症だとどうして殺すと言うことになるんですか?むしろ認知症を広め、先王様の為に皆が協力するのでは無いですか?」

「その声もあるが、先王を殺したい連中がいる。それを理由に、現国王を失脚させたい者達もだ」

「国王様を失脚させるの?」

「俺達獣王族を引きずり落として、国を乗っ取ろうとしている奴らがいるからな」

「獣王族?」

 殿下は私にも分かるように、この国の獣人について説明してくれた。

「そうだ。獣王族は俺達、哺乳類ネコ科の獣人だ。他にイヌ科の狼族、空を飛ぶ鳥人族、海や川に住む魚人族、爬虫類系獣人、他にも細かく種別はあるが大きく分けるとこんな感じだ」

「なるほど、今の王は獣王族なんですよね?貴族はともかく、国民的に獣王族が統治していて不満があったりするんですか?」

「そんなことは無いはずだ。先王もだったが現国王も、民のために寄り添い、尽力を尽くしいる。不満が無いとは言えないだろうが、我がエンブリア王国は、他国に類を見ない素晴らしい国だ」

「へーー。そうなんだ」

 殿下の力説に、心のこもらない声だけの返事をしてしまった。