「いや、いや、いや、それも違いますから!至って普通で平凡な生き物で、そんな風に拝まれるよな存在ではないですよ」

 ティエナさんは無表情なまま、手を合わせ神に祈りを捧げるような格好をしている。無表情さと、ポーズがちぐはぐでシュールだな。なんて思っていると、我に返ったのか、ティエナさんが咳払いをした。

「ティエナさん、分かって頂けましたか?普通の人間です」

「はい。エン様が尊いお方だと言うことはしか、分かりませんでした」

「だから違うんだってば!」

 そんなやり取りとしていると、ティエナさんの頬が赤くなっている気がした。

 それに今一瞬だけど口角が上がったような……?

 見間違え?

 表情筋が動かないって自分で言ってたし。

「ささ、その美しい耳がよく見えるように髪をまとめましょう」

 そう言ってティエナさんが手慣れた様子で髪をまとめていく。

「わーーっ、ティエナさんは器用なんですね。こんなに綺麗に髪をまとめて頂いて、ありがとうございます」

「いえ、エン様。わたくしごときに敬語はいりませんし、ティエナとお呼び下さい」

「えっと……でも……」

「ティエナでお願いします」

 ズイッと無表情で迫られると怖い。

 何だろう、凄い圧が……。

 ティエナさんの圧に押し負ける形でエンはコクリと頷いた。