シンと静まり返った部屋で一人、ボーッとしていると、また扉のノック音が聞こえてきた。

「どうぞ」

 扉に向かって返事をすると、猫耳のついた女性が入って来た。

「エン様、失礼いたします。本日よりエン様のお世話をさせて頂きます。メイドのティエナと申します」

 メイド?

 お世話?

「あの……申し訳ないのですが、私にメイドは必要ないです」

 申し訳なく思いながら私がそう言うと、ティエナさんは表情を変えずにこちらを見てきた。

「これは決定事項です。殿下からの申しつけですので、エン様に拒否権は無いかと思われます」

「そんなーー」

 溜め息を付きながらそう言うと、ティエナさんに声をかけられた。

「エン様、お食事の前にお着替えと御髪を直しましょう」

 私はティエナさんに促されるままに、ワンピースに腕を通す。ミモレ丈の水色のワンピースは少女趣味で、リボンとレースがヒラヒラと沢山ついていて痛い感じが……。26歳の私には似合わないと思うのだが、それを分かっているのかいないのか、ティエナさんは無表情だ。

「ティエナさん、このワンピースは私には似合わないのではと……もう少し大人っぽい服はありますか?」

「いえ、エン様にとても良く似合っていると思います」

 ニコリともせずにそんな事を言われても、説得力がありませんよティエナさん。