青ざめたり赤くなったりを繰り返す私を見ながら、殿下が笑った。

「エンは俺の耳や尻尾を触っただろう?」

「はあ……それは……触りました……ね」

「俺達獣人は家族や婚約者以外に耳や尻尾は触らせない」

「それって……」

 ふっと殿下が柔らかく笑った。

 うわっ……可愛い。

 思わず頭を撫でてしまいそうになった所で、部屋にノック音が響いた。

「何だ?」

 殿下の声に、廊下にいた人物が慌てふためいているのが何故か分かった。

 どうしたのだろう?

 キョトンとしていると、扉がゆっくりと開いた。そして、そっと中を覗いてきた男性が目を見開いた。

「どうしたんだ」

「あ、あ、あ、殿……殿下……なぜこちらのお部屋に?」

「昨夜、エンと話をしていたら、そのまま眠ってしまってな」

「さ……左様でしたか。ですが、今後このようなことの無いように」

「ああ、分かっている」

 殿下がバサッとシーツをめくると、半裸だった殿下はもう服を着ていた。

 手品じゃ無い。

 これって……。

「魔法!」

 私が手を叩いて瞳をキラキラとさせていると、殿下が少し照れた様子で頬を人差し指で掻いた。それを見ていた男性が驚愕した顔で「殿下……」と一言呟いた。

 何だと言いたげに殿下が男性を睨む。

 ?

 どうしたのだろう?

 しかし二人は何事も無かったように部屋を出て行こうとしていた。

「エン……またな」

 チラリと殿下がこちらを見てから扉を開いた。男性は私に一礼すると、殿下について部屋を出て行った。