だって、だって仕方がないじゃない、こんな状況だよ。叫びたくもなるでしょう。そんな私の声は森の奥へと消えていくだけ……。自分の声が消えていった森の奥へと視線をやりながら、縁は一人平静を装った。

 一旦落ち着こう。

 この状況について考えないと……これは、異世界トリップというやつだろうか?もしそうだとして、どうして私なわけ?

 ラノベのような展開に頭が混乱する……その手の本は読んだことはある。あるが、特にのめり込んで呼んだ本も無かったし、ゲームもやる暇が無かったからやっていない。そんな自分が異世界トリップするとか……信じられない。

 はぁーーっと大きく溜め息を付いて、これからどうするかを考える。

 とりあえず自分の身につけている物のチェックだ。

 今の私は仕事中だったため動きやすいパンツスタイルだ。上は施設の名前の入ったポロシャツで、その下に薄い黒の長ティーシャツを着ている。更にその上にエプロンを着けていた。足には動きやすい履き慣れた運動靴。森を歩くには申し分ない。

 うん。

 大丈夫そうだ。