暖かい物を口に入れるのは4日ぶりだ。

「ああ……幸せ」

 そう声に出すと、先王様が満足そうに頷いた。

「そちの名は何だったかな?」

「魔王様、エンと申します。」

「そうだったな。エンよ、こっちの茶菓子も食してみよ」

「わーー。ありがとうごいます」

 カップケーキの様なお茶菓子に手を伸ばしほおばる。

 4日振りのまともな食べ物!

「美味し!これとっても美味しいですよ。魔王様も食べてみて下さい」

 二人で優雅なお茶の時間を楽しむ。そうしているうちに、先王様が船をこぎ始めた。眠たくなって体が前後に揺れている。それもそうだろう、老人があれだけ暴れていたのだから疲れたのだろう。

「魔王様、お疲れのようですね。少し休まれては?」

「そうだな。そうさせてもらおう」

 そう言って立ち上がった先王様は、暴れることは無かった。回りで見守っていた人々は、先王の変わりように驚いている様子だ。

 私は先王様を見送りながら、ふーっと大きく息を吐き出す。

 先王様、落ち着いたようで良かった。

 そんな私の元に殿下がやって来た。