「大変!マタタビの匂いが強すぎるんですね。すぐに袋にしまいますね」

 私は素早くマタタビを袋に入れると、ズボンのポケットにしまった。するとマタタビの匂いが薄れたのか、正気を取り戻した殿下が何も無かったかのように立ち上がり、話し出した。まるで何も無かったような顔をしていますが、今私の膝の上で喉を鳴らしていましたよね。とは言わないでおこう。すました顔で話をする殿下がおかしくて、縁は声を出して笑ってしまった。

「なっ……お前何がおかしい」

「だって、殿下が可愛くて」

「かっ……可愛いだと!」

「はい。可愛いじゃないですか」

 そう言って笑うと、殿下はプイッと視線を逸らしてしまった。

 ふふふっ……やっぱり殿下は可愛い。

 ツンデレな所は猫のようだ。家で飼っていた黒助を思い出す。

 先ほどこの人に殺されかけたことも忘れて和んでいると、屋敷の中から大きな声が聞こえてきた。