縁はズボンのポケットからマタタビの木を取り出し、手に取った。

 それを見た王子の眉がピクリと動く。

「それは何だ?」

「マタタビの木です」

「マタタビとは?」

「特に害がある物では無いですよ」

 そう言いながら、マタタビの木を袋から一本取り出して見せる。すると王子がその場で膝を付いた。

「え?大丈夫ですか?気分でも悪くなってしまいましたか?」

 縁は王子と同じように膝を付くと、顔を覗き込んだ。王子の顔色は特には悪くないが、頬がほんのりと赤くなっている。王子は縁の心配をよそに、マタタビの木を持った縁の手に顔を近づけた。

「クルルル……」

 何処からか、猫の甘えた声が聞こえてくる。

 猫?

 しかし猫などどこにもいない。

 目の前にいるのはこの王子のみで……ウソ……王子は縁の手にすり寄りながらクルルルと声を出していた。

 えっ?

 何何ナニ……可愛い!猫ちゃん!?

 王子様はとろんとした目で、頬を赤らめながら喉を鳴らしている。先ほどの神々しい姿の人と、同一人物とは思えない。

 可愛い。