誰もいなかったが、一応屋敷内に入ることを告げる。それから恐る恐る門をくぐり中へと入っていくと、大きなお屋敷との間に、これまた大きな庭が現れた。庭は広いが手入れが行き届いていない。っと言うか何もされていない……ということは、ここに人が住んでいる可能性は低いのか?キョロキョロと回りを見渡しながら屋敷の扉近くまで来た時だった。

「貴様何者だ!?どうやって、ここに入って来た」

 背後から怒気に満ちた低い男性の声が聞こえて来た。それと同時に肩に今まで感じたことの無い重み……。肩に乗る冷たくて重いそれを、体を動かさずに視線だけ動かして確認する。

 これって……これって……剣だよね……。 

 私の首なんて簡単にスパッと切れそうな剣が、自分の肩に無造作に乗せられている現実に縁は引いた。物騒にギラつく剣が、縁を追い詰める。身動きが出来ずに固まる縁に向かって、背後から男が更に低い声で問うてくる。

「何者だと聞いているのだが?答えられぬのか?」

 グルル……と獣の唸り声まで聞こえてきた。

 ヒィッ……。

 ウソでしょう。

 もしかして私詰んだ?