何度見ても胸が押しつぶされるような感覚に、耐えきれずエンは映像から目を逸らした。レオも何度も見た痛たましい映像に、怒りを再燃させている。

「これを見ても利用者に手は上げていないと?悪いことはしていないと?そう言えるか?」

 レオにそう問われても、パグテノは悪びれる様子も無く口を開いた。

「そうです。私は悪くないでしよう。こいつらは悪魔付きです。すぐに忘れてしまうのですよ。何をしても良いでしょう。むしろ感謝して欲しいぐらいです。悪魔付きをこうして世話してやっているのですから」

 認知症だから、忘れてしまうから良いだろ言う。そう言い放ちながらパグテノがニヤリとしながら笑った。私はその顔を見て、怒りで頭に血が上るのを感じた。他人に対してこんなに怒りを覚えたのは生まれて初めての事だった。

「ふっざけるな!!」

 私がパグテノに掴みかかろうとすると、それより早くレオが剣を抜きその切先をパグテノの首に突きつけた。「ヒィッ」と小さく悲鳴を上げたパグテノはカタカタと体を震わせた。

「虐待は罪だ。お前は分かっているのか?ここの管理を任せる時にこの話はしたはずだが?」

「それは……ですが……。こいつらは忘れてしまうのですよ。どんなに痛ぶっても、すぐに忘れてしまうのですよ」

 私はその言葉を聞いて、感情を抑える事が出来ずに声を荒げながら叫んだ。

「何を言っているんですか?!忘れてしまうから傷つけてもいい?暴言を吐いてもいい?そんなわけが無いでしょう。こんなに痛がって叫んでいるじゃ無いですか。忘れてしまったとしても、辛く悲しい思いは脳に刻み込まれる。その思いは精神をむしばむんですよ。なぜ分からないのですか?あなたには心が無いのですか?」

「エン様ですが……」