「貴様は今、何をした?」

 低く冷たい声がフロアーに響き、レオの怒りによる冷気が広がっていく。

 グルル……。

 怒りにまかせて噛み殺さんとする様子のレオに、皆が息を呑む。誰もが体を硬直させ声も出せない状況の中で、パグテノだけがヘラヘラと口を開いた。

「レオンポルド殿下、これはどういうことですかな?何故私をこのように床に組み敷くのですか?」

 まるで分かっていない様子で、パグテノが問うた。

「……お前は何も分かっていないのだな」

「いえ、エン様を叩いてしまったことは不可抗力です。本当に申し訳ないと思っております。しかし、それはエン様が飛び出して来たためでして……私は悪くありません」

 パグテノがそう言い切ると、レオの米神がピクリと動いた。

「ほう……貴様は自分が悪くないと言うんだな?」

「はい。私は何も悪くありません。悪いことなどしておりません」

「そうか。利用者に手を上げているように見えたが?先ほど振り上げた手はたまたまエンにぶつかっただけか?」

「その通りです。私はこの施設の施設長ですよ。利用者様に手を上げることなどありません」

 白々しくウソをつくパグテノに、レオが冷ややかな視線を送りなら手に持っていた物を見せた。

「では、これを見てもらおうか」

 レオはパグテノの目の前で魔道具である防犯カメラのスイッチを入れた。するとそこに虐待現場が映し出された。

 悲鳴を上げる利用者さん。

 涙を流しながら許しを請う姿。

 高笑いするパグテノ。