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 突き抜けるような青空の下でエンは拳を強く握りしめていた。

 ここは新施設の門の前。

 私の隣にはレオが、その後ろには数人の騎士を引き連れている。

 皆、緊迫した様子で新施設を見つめていた。今日、私達が視察で来ることは伝えていない。抜き打ちの視察だ。

「では行くぞ」

 レオの一声で、皆が頷き合うと新施設へと入っていく。するとすぐにガッシャーンと何かが割れる音が聞こえてきた。それど同時に聞こえてくる悲鳴。

「やめて!痛い。殴らないで……」

 悲痛な叫び。

「うるさい!悪魔付きが!」

 エン達はメインフロアーの扉をゆっくりと開け、怒声の聞こえてくるフロアーを確認した。するとパグテノ施設長が手を振り上げ利用者のエルラさんを殴りつけているところだった。私は思わず前へと駆け出すと、エルラを庇い小さな体に覆いかぶさる。それから一拍おいて、パグテノ施設長の手のひらが、エンの頬を打った。

「パンッ」

 皮膚を打つ乾いた音が部屋に響き、シンと静まり返るフロアー。

「……っ……」

 私の痛みに堪える音だけが聞こえる。
 
 痛い……ビリビリとした痛みとともに、頬が熱くなる。私が顔を(しか)めていると、レオがパグテノ施設長の腕を捻り上げ、床に組み敷いた。