*

 おかしい。

 絶対に何かあるはずだ。

 メアリーさんの最後の言葉……「虐……」って言いかけてた。

 パグテノ施設長が入室してきてからのカルパさんとメアリーさんの様子を思い出し、私は眉間に皺を寄せ大きな溜め息を付いた。

「はぁ……疑いたくは無いけれど、パグテノ施設長が怪しい。でもパグテノ施設長が虐待をしているところを見たわけでも無いし……疑いだけでは罰することも出来ないわね」

 ブツブツと独りごちながら、今後のことを考える。

 実際に虐待しているところを記録できるような物があれば良いのだけれど……例えば防犯カメラのような物を……。

 そう考えながら、頭に一人の人物が浮かんだ。

 もしかしたらどうにかなるかもしれない。

 私はすぐにその人物へと手紙を出した。それから数日後、試作品がエンの元へと届いた。

「凄い!あんな簡単な手紙での説明だけで、ここまでの物を作ってくれるなんて!」

 感嘆の声を上げるエンを見たレオが、私の手にある物に興味を示した。

「エンそれは一体何なのだ?」

「ふふふっ……これがあれば、誰も悪いことが出来なくなる。魔法の道具です」

「悪いことが出来なくなる?そんな事が?」

 エンはほくそ笑みながら、リリとルルに魔道具の使い方を説明し、新施設へと向かってもらった。そして数日後、もう一度リリとルルに魔道具の回収をお願いした。

 回収されてきた魔道具を手にし、エンは胸の鼓動を早めた。それはけして高揚感から来る物では無く、不快感からくる嫌な鼓動だった。

 落ち着くのよ私……。

 一度大きく息を吸い込むと、息を整えながら仕事モードに切り替える。それからレオに視線を移し頷き合うと、魔道具のスイッチを入れた。すると映像が鮮明に映し出され、その映像を見たエンは両手で口元を押さえた。口を両手で塞がなければ悲鳴を上げていたことだろう。

 カタカタと震えながら映像を見続ける私の肩を、レオが優しく包み込んでくれた。それが無かったら最後まで見届けることは出来なかったと思う。それぐらいに惨く、酷い映像だったのだ。

 どうしてこんなに酷いことが出来るのだろう。

 エンとレオが見た映像は、虐待の証拠となり得る物だった。


 数日前、エンが頭に思い浮かべた人物は鍛冶屋のガンスさんだった。この人なら防犯カメラに近しい物を作ってくれるのでは?と思ったのだ。私のざっくりとした説明の手紙を、上手く汲み取ってくれたガンスさん。

 ホントに天才だと思う。