怪しい植物たちを避けながら歩く歩く歩く。道なき道を歩いているため、歩きづらくてあっという間に息が上がってくる。それでも体力はまだまだ残っている。大丈夫、まだ頑張れる。そう自分に言い聞かせ、森の中を注意しながら進んでいく。

 そうして自分を奮い立たせて、何時間経っただろうか?

 疲労から足がプルプルと震え、思考能力が低下する。もう半日以上は過ぎただろう。

 やばい、まだ第一異世界人にも出会っていないというのに、早くしないと異世界に来て二日が過ぎてしまう。

 焦りばかりが募るなか、更に歩き続けて数時間後、気づけば空はあかね色に染まり始めていた。

「うそ……何も見つけられなかった」

 人に会えなくてもいい、何か口に出来る木の実でもと思っていたが、この森にあるのは動く花々やツタのみ……。縁は手頃な木を見つけ、体を休ませる場所を確保する。

「よし、今日はここで眠ろう。その前に食事だ」

 ポケットからクッキーを取り出し、口に運んだ。クッキーの残りは1枚のみ。アメは歩きながら一つ食べたから残りは4コ。クッキーを食べたばかりなのに、お腹がグーと大きな音を立てた。

「どうして私がこんな目に遭わなければいけないの」

 過酷すぎる現状に、涙が出た。帰りたい……美味しいご飯にベッドにお風呂、今まで身近にあった普通が、どれだけ幸せなことだったのかを痛感した。

 明日はどうなるんだろう。

 先の見えないゴールを目指すのは神経をすり減らす。

 これ以上は深く考えずに眠ろう。
  
 縁はゆっくりと目を閉じると眠りに落ちた。