俯いて何も言わなくなってしまったメアリーさんが心配になる。

「メアリーさん?」

 優しく声を掛けると、メアリーさんがハッとしたように顔を上げた。

「私……私はこのお仕事を……あまり良く思っていませんでした。悪魔付きに……近づくのも怖いと……思っていました。でも……お、お金のためなら……仕方が無いって……弟たちのために頑張らなくちゃって……ここで働いて……認知症について学んで……沢山の事を得ることが出来ました」

 それを聞いたカルパさんも悲しそうな顔をしながら、声を上げた。

「それなら私だって、悪魔付きを怖いと思っていました。でもエン様に認知症について教えを請うことで、分かったことが沢山ありました。悪魔付きは認知症という病気で、獣人としてのプライドも誇りも持っていると……、一人の獣人だと言うことを!この仕事はとてもやりがいのある仕事です」

 最後は一気にまくし立てるように、カルパさんが口を動かした。

「うん。メアリーさんとカルパさんの気持ちは受け取ったよ。認知症について理解して頂いて嬉しいです。ありがとうございます。あなた達二人に出会えて、私は幸運でした」

「「そんなお言葉もったいないです!」」

 二人の声がハモったことがおかしくて、私達三人はそろって吹き出した。そして声を上げて笑い合った。